お住まいの塗り替えを経験されたことがある方や、塗り替えを検討中の方でしたら、住宅塗装の折り込みチラシや外壁塗装業者のホームページなどで、「外壁塗装◯◯万円〜!」「屋根塗装◯◯万円〜!」などの広告をご覧になられたことがあるかと思います。
実際には、お住まいの塗り替えにかかる費用は、建物の劣化状態や使用する塗料、ベランダ、雨樋、雨戸などの付帯工事の内容など、一軒一軒違います。
塗装業者さんに実際にお見積りを取られた方でしたらご経験があるかもしれませんが、建物の劣化診断は現場調査した業者さんの判断に委ねられますので、補修方法やどこまで直すかなどで、お見積りの内容が広告で提示していた価格と異なるのは当然といえます。
ですが、単に「この塗料を使って塗る」という塗装工事の金額であれば、実は塗料メーカーが設定している価格基準があります。
設計価格(材工設計価格、材工価格)と呼ばれており、建築では基本設計の試算に使われています。
※基本設計:建物の要望や意図を建主からヒアリングし、建築基準法等などの法律に準じた仕様書や基本設計図書を作り建物の概要を決めること。
今回は、「塗料の設計価格とは」「ご自分でできるご自宅の外壁塗装費用の目安の算出方法」そして、「外壁塗装の適正価格」について、塗料メーカーとして塗装業者とは異なる視点からご説明いたします。
目次
設計価格とは
設計価格とは材料代(塗料代)に塗る手間代(人件費)を足した、標準的な施工を行った際の1㎡あたりの塗装にかかる参考工事金額のことです。
この価格があれば、あとは塗装面積さえ分かれば掛け算で塗装工事金額を算出できます。
各塗料メーカーは塗料の単価や仕様によって「設計価格」をホームページなどで公示しています。
設計価格はどのように算出されているのか
設計価格がどのように設定されているのかご説明します。
各塗料メーカーによって詳細な算出方法は異なりますが、最終的な設計価格としては各社とも金額の大きなズレはありません。
塗料の価格や作業性を考慮して「①塗料代」「②人件費」「③諸経費」を設定
①塗料代:塗料の上代価格/1缶で塗れる㎡数 ⇒ 1㎡当たりの塗料代が出ます。
②手間代(人件費):職人さんの日給/一人で1日に塗れる㎡数 ⇒ 1㎡当たりの手間代が出ます。
③諸経費:機械や工具の損料や運搬費、養生費、管理費などが含まれます。
この3つを足したものが1㎡当たりの材工設計価格となります。
ですが、10㎡塗るのと1,000㎡塗るのでは経費や効率を考えると同じではありません。
弊社も含め、多くのメーカーは設計価格を300㎡以上の面積を塗装する場合の価格としています。
ですので、戸建住宅(100~150㎡程度)の場合は設計価格よりも少し割高で計算する必要があります。
また、③の諸経費についてはメーカー毎に計上項目が異なる場合がありますが、さほど金額に大きな影響はありません。
設計価格に含まれていない金額
このように、設計価格は塗料を塗る工事金額だけを算出したものになります。
しかし、実際の塗装工事では、工事に必要な仮設足場の設置や塗装前に行う高圧洗浄などの費用がかかります。
〈仮設足場〉
現在はくさび緊結式足場(ビケ足場)がほとんどであり、その実勢価格は800~1,200円/㎡くらいです。一般的な30坪~の2階建であれば、180,000円~となります。
〈高圧洗浄〉
350~500円/㎡として、150㎡の家で60,000円~程度です。
細かく言うとお施主様の水道を使わせていただきますので水道代も少しかかります。
【ご自分で計算できる】実際にかかる外壁塗装工事の金額は?弊社塗料で算出
それでは平均的な住宅を想定し、おおよそ30坪、塗装面積150㎡の外壁(窯業系サイディング)に、弊社のラジカル制御形無機塗料「ラジセラpro」(期待耐用年数約18年)を塗装した場合の塗装費用を計算してみましょう。
工程・工種 | 仕 様 | 金額例(税別) |
---|---|---|
仮設 | ビケ足場 外壁 | 180,000円 |
水洗い | 高圧洗浄 150kgf/㎠以上 | 60,000円 |
下塗り | クオリティマルチサーフ 1,000円/㎡ ※2割増 | 180,000円 |
中塗り、上塗り | ラジセラpro 2,900円/㎡ ※2割増 | 522,000 円 |
合計 | 942,000円 |
設計価格の基準は300㎡未満ですので、念のため2割増しで計算しました。
それでもこのくらいの金額で、耐用年数18年の外壁塗装工事ができる計算になります。
ですが冒頭にも述べましたように、それぞれの住宅状況によって補修や修繕が必要だったり、シーリングの打ち替えなどをしたりする場合は当然費用が別途かかります。
そのような付帯工事も積み上げていき、全体のボリュームや条件によって値引きを入れたものが最終的な見積り金額になります。
外壁塗装の適正価格とは
このように、設計価格を用いればご自分でも塗装工事単体の標準的な金額を算出することができます。
もしかしたら、いまお手元にある塗装業者の見積り金額と設計価格で算出した金額に大きな差がある場合があるかもしれません。
仮にそうであっても、その見積り金額が適正価格なのかどうか、というのを明確に判断するのは難しいところです。
価格には、その価格である理由がある
適正価格は、塗装業者の企業規模や経営体質、提供するサービス内容やフォロー体制などによって変わってきます。
ショールームを構え、たくさんの従業員と社用車を抱え、良い塗料を使い、施工後のアフターフォローもしてもらえる塗装業者もありますし、かと思えば塗り替えという作業を完了させるだけの塗装業者もいます。
その良し悪しは別問題として、前者と後者の見積り金額は大きく開いて当然です。
上質で長持ちし無償修理もできるハイブランド品を購入するのか、最低限の機能だけ果たせれば壊れたら買い替えで十分なのか。
塗装も同様で割高な理由も割安な理由も必ずあります。そしてそれは設計価格とは別の話になります。
おわりに
塗料の設計価格や外壁塗装の適正価格について紹介しました。設計価格が塗料メーカーの設定する基準として世の中で運用されているのは事実です。ほとんどの塗料メーカーはホームページなどで設計価格を公表しています。そしてその価格を用いれば、どなたでも塗装工事単体の標準的な金額を算出することが可能です。もしお見積の金額に疑問を感じるのでしたら、工事金額がなぜそんなに高いのか、なぜそんなに安いのか、塗装業者に直接尋ねてみることをおすすめします。適正な価格とは、施主の捉え方次第とも言えますが、実際に住まわれる方は施主ご自身です。この先何十年も住む大切なお住まいのために、ご理解・ご納得されたうえで、後悔のない理想の外壁塗装を実現させましょう。